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秋田地方裁判所 昭和51年(ワ)311号 判決 1981年4月16日

原告

鷲谷力

ほか一名

被告

佐藤久

主文

一  被告は原告鷲谷力に対し金九四万五二二二円、原告ムネに対し六二万一九九三円及び右の各金員に対する昭和五二年七月二〇日以降支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らの被告に対するその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを四分し、その一を原告らの負担とし、その余を被告の負担とする。

四  この判決は主文第一項に限りかりに執行することができる。

事実

第一当事者双方の求めた裁判

一  請求の趣旨

被告は原告鷲谷力に対し金四〇三万二四九一円、原告鷲谷ムネに対し二七二万四八五九円及び右の各金員に対する昭和五二年七月二〇日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

原告らの請求を棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

第二当事者の主張

(請求原因)

一  事故の発生

原告らは次の交通事故(以下「本件事故」という)により損害を蒙つた。

(一) 発生日時 昭和四九年一〇月八日午後〇時五五分

(二) 発生地 秋田県南秋田郡八郎潟町字一日市二一八番地

(三) 加害車両 秋五そ一二二〇自家用小型自動車

右運転者 被告佐藤久

(四) 被害車両 秋五ゆ九八六二自家用小型自動車

右運転者 原告鷲谷力

同乗者 原告鷲谷ムネ

(五) 態様 被告佐藤久は前記加害車両を運転し前記発生地を走行中、路上に停車中の被害車両に追突した。

二  責任原因

被告は事故当時前記加害車両を所有し、自己のため運行の用に供していたものであるが、右車両を運転して走行中前方の注視を怠つた過失により本件事故を発生させたものであるから原告らに対し人的損害については自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という)三条により物的損害について民法七〇九条により原告らの蒙つた損害を賠償する責任がある。

三  原告らの傷害の内容、程度

1 原告鷲谷力(以下「原告力」という)

(1) 負傷内容 頸腰椎捻挫

(2) 治療の経緯

昭和四九年一〇月八日秋田組合総合病院の治療を受け、翌九日より昭和五〇年二月一八日まで秋田市内中通病院に通院(診療実日数二五日)、昭和五〇年二月二一日より昭和五二年四月三〇日まで(八〇四日)青森県所在ときわリハビリテーシヨン病院に入院した。

2 原告鷲谷ムネ(以下「原告ムネ」という)

(1) 負傷内容 頸椎捻挫

(2) 治療の経緯

昭和四九年一〇月八日より同月一六日まで秋田県南秋田郡湖東組合病院に通院(診療実日数二日)、同年一〇月一一日より昭和五〇年二月一八日まで秋田市内中通病院に通院(診療実日数二四日)、同年一月二三日より同月一八日まで秋田大学医学部附属病院に通院(診療実日数二日)、同年二月二一日より昭和五二年四月三〇日まで(八〇四日)青森県所在ときわリハビリテーシヨン病院に入院した。

四  損害

1 原告力

(一) 病院関係費

(1) 治療費 合計 五四七万九八四七円

(イ) 秋田組合総合病院分 二三〇〇円

(ロ) 中通病院分 一一万七九八〇円

(ハ) ときわリハビリテーシヨン病院分

治療費 五一六万〇九六七円

針治療費 一九万八六〇〇円

(2) 通院交通費 合計 一万三〇〇〇円

(イ) 秋田組合病院通院分 五〇〇円

(ロ) 中通病院通院分 一万二五〇〇円

(3) 入院雑費等 合計 四二万七三八〇円

(イ) 入院雑費 四〇万円

ときわリハビリテーシヨン入院期間八〇〇日間の一日当り五〇〇円の割合による

(ロ) 入院暖房費 二万七三八〇円

(4) 診療書交付料 二〇〇〇円

(二) 休業損害 二八八万七二八〇円

原告は事故当時合資会社八郎潟タクシーにハイヤー乗務員として勤務し、昭和四九年七月、八月、九月の三か月間合計二七万七九三五円(一日平均三〇八八円)の収入を得ていたところ本件事故により昭和四九年一〇月八日から昭和五二年四月三〇日まで休業し、その間二八八万七二八〇円相当の得べかりし利益を喪失した。

(三) 慰藉料 一七〇万円

(四) 車両損害 一四万四二七八円

原告車両は前所有者が昭和四四年四月三〇日五五万円で購入したものを原告が昭和四八年五月二日二八万円で譲り受けたもので、事故時まで四年と一六五日使用しているのでその耐用年数を六年として減価計算により事故時の価格を計算すると一四万四二七八円となる、その算式は次のとおりである。

<省略>

(五) 損害の填補

以上の損害額合計一〇六五万三七八五円に対し次のとおり合計七三一万一二九四円が填補されているので残額は三三四万二四九一円となる。

(イ) 被告支払分 九九万八三〇七円

右は被告の任意弁済分のほか自賠責保険からの支払分八〇万円を含む

(ロ) 労災保険 合計 六三一万二九八七円

医療費 四六五万四三〇一円

休業補償 一六五万八六八六円

2 原告ムネ

(一) 病院関係費

(1) 治療費 合計 五三四万四五七六円

(イ) 湖東総合病院 二万〇三六〇円

(ロ) 中通病院 一〇万六〇〇〇円

(ハ) 秋田大学附属病院 四五九〇円

(ニ) ときわリハビリテーシヨン

治療費 五〇二万三八一六円

針治療費 一八万九八一〇円

(2) 通院交通費 合計 一万二二八〇円

(イ) 湖東総合病院通院分 二八〇円

(ロ) 中通病院通院分 一万一〇〇〇円

(ハ) 秋田大学附属病院通院分 一〇〇〇円

(3) 入院雑費等 合計 四三万八五二〇円

(イ) 入院雑費 四〇万円

ときわリハバリテーシヨン入院期間八〇〇日間一日当り五〇〇円の割合による

(ロ) 暖房費 二万七〇三〇円

(ハ) テレビ使用電気代 一万一四九〇円

(4) ポリネツクカラー代 四〇〇〇円

(5) 診断書交付料 二三〇〇円

(二) 休業損害 一一五万三七九〇円

原告ムネは事故当時キクチ縫製に勤務し昭和四七年七、八、九月分合計一一万一一三四円(一日平均一二三四円)の収入を得ていたところ、本件事故により昭和四九年一〇月八日から昭和五二年四月三〇日まで休業しその間一一五万三七九〇円相当の得べかりし利益を喪失した。

(三) 慰藉料 一七〇万円

(四) 損害の填補

以上損害額合計八六五万五四六六円に対し次のとおり合計五九三万〇六〇七円が填補されているので残額は二七二万四八五九円となる。

(イ) 被告 四八万三三九五円

(ロ) 自賠責保険 四一万二九三〇円

(ハ) 労災保険 合計 五〇三万四二八二円

医療補償分 四五六万四九八三円

休業補償分 四六万九二九九円

五  弁護士費用 六九万円

原告らは本件訴訟を原告代理人金野弁護士に委任したが、その費用として原告力は原告ムネの分を含め手数料として一〇万円を支払い、謝金として五九万円の支払を約している。

六  結論

よつて被告に対し原告力は四〇三万二四九一円原告ムネは二七二万四八五九円及び右の各金員に対する昭和五二年七月二〇日から支払済みに至るまで民事法定利率年五分の割合による金員の支払を求める。

(請求原因に対する認否及び主張)

一  認否

1 請求原因一項は認める。

2 同二項中被告が加害車両を所有し自己のため運行の用に供していること、被告にその主張の過失のあつたことは認め、その余は争う。

3 同三項の事実は争う。

4 同四項1の事実中(一)、(二)、(三)は知らない。(四)は争う。(五)のうち損害の填補額は認める。

5 同四項2の事実中(一)、(二)、(三)は不知、(四)のうち損害の填補額は認める。

6 同五項は知らない。

二  主張

1 原告力は昭和四八年八月一一日訴外谷村錦水から交通事故による被害を受けており、原告力の傷害は本件事故による傷害と右事故による傷害とが競合して生じたものであるから被告が賠償すべき本件事故と相当因果関係にある損害の範囲は同原告の人的損害の二分の一に止まる。

2 原告らは本件事故後、昭和五〇年二月一八日まで中通病院に通院治療を受け、同病院においてそのまま通院治療を受ければ軽快全治したと診察されていたにもかかわらず、ときわリハビリテーシヨンに長期間にわたり入院治療したもので右長期治療は過剰診療にあたる。

(抗弁)

被害車両の運転手である原告力は、被告運転車両に後続して運行していたものであるが急にスピードを出して追越しをし追越した直後急停車したため加害車両が追突したもので、本件事故の発生については原告力にも過失があるので過失相殺されるべきである。

(抗弁に対する認否)

抗弁事実は争う。

第三立証〔略〕

理由

一  請求原因一項の事実及び被告が加害車両を所有し、自己のため運行の用に供していたものであること、被告は右車両を運転して走行中前方の注視を怠つた過失により本件事故を発生させたものであることは当事者間に争いがない。

右争いのない事実によると、被告は原告らに対し人的損害については自賠法三条により、物的損害については民法七〇九条により原告らの蒙つた損害を賠償する責任がある。

二  そこで原告らの損害について判断するに先立ち、原告らの治療の内容、経緯について検討する。

1  成立の真正に争いのない甲第二号証の八、第三号証の一ないし四、第六号証の四、六、第七号証の一ないし五、書面の内容とその形式自体に照らし成立の真正を認める甲第一二号証、原告鷲谷力、同鷲谷ムネ各本人尋問の結果によれば次の事実が認められる。

(一)  原告車の運転者である原告力は本件事故により頸腰椎捻挫の傷害を受け、事故当日の昭和四九年一〇月八日秋田組合総合病院の治療を受け、翌九日より昭和五〇年二月一八日までの間秋田市中通病院に通院(診療実日数二五日)し、同月二一日より昭和五二年四月三〇日までの八〇四日間青森県南津軽郡常盤村所在ときわリハビリテーシヨン病院(以下「ときわ病院」という)に入院したこと。

(二)  原告車の同乗者である原告ムネは本件事故により頸腰椎捻挫の傷害を受け事故当日の昭和四九年一〇月八日より同月一六日まで秋田県南秋田郡湖東組合病院に通院(診療実日数二日)、昭和四九年一〇月一一日より昭和五〇年二月一八日まで秋田市中通病院に通院(診療実日数二四日)し、同年一月二三日より同月二八日まで秋田大学医学部附属病院に通院(診療実日数二日)同年二月二一日より昭和五二年四月三〇日まで八〇四日間ときわ病院に入院したこと、

以上のとおりである。

2  被告は原告らのときわ病院における入院治療は過剰診療にあたる旨主張するので検討するに、成立の真正に争いのない乙第一ないし第三号証、第八、第一二、第一三、第一六、第一七、第二一、第二二、第一九、第四七号証、甲第二号証の八、第六号証の六、証人佐藤善政の証言、原告鷲谷力本人尋問の結果によれば次の事実が認められる。

(一)  原告力はタクシー運転手で、本件事故前の昭和四八年八月一一日南秋田郡八郎潟町地内道路に停車中訴外谷村錦水の運転する普通ライトバンに追突され、頸椎捻挫の傷害を受け右傷害に基因し、めまい、頭痛を訴え、その治療のため昭和四八年八月一一日から同月一五日まで湖東病院に通院し、同月一六日から同年一二月二八日まで入院し、昭和四九年一月二一日から同年四月一八日まで中通病院に通院し、同年九月三日より再度同病院に通院治療中の同年一〇月八日本件事故に遇つたものであるが、右事故による傷害につき昭和四九年九月二七日中通病院医師佐藤善政の診療を受けた際「右手の第三、第四、第五指がおかしい、牽引して却つて具合が悪くなつた。吐き気がする。背中が痛い」等と訴えていたこと、本件事故当日の昭和四九年一〇月八日前記佐藤医師の診療を受けた際は「ふわふわしたような感じになる。吐き気もあるし、頭も痛いし、首を動かしても吐き気がある」と訴えていたほか、新たに腰痛を訴えていたが、レントゲン所見上は頸椎、腰椎に異常は認められなかつたこと、

(二)  原告ムネは昭和四九年一〇月一一日中通病院の診療を受けた際、目の底が痛い、左肩から腕、右後頭部から頸部にかけて痛いと訴え、同年一二月二八日には腕の痛み、だるさを訴えていたものの症状は楽になつていたこと、

(三)  原告らは中通病院に通院中、ときわ病院が良いという他の患者の噂さを耳にし、昭和五〇年二月二一日同病院に入院し治療を受けるに至つたもので、右入院は医師の指示、勧告に基づくものではないこと、

(四)  被告は昭和五〇年六月一四日ときわ病院に入院中の原告力宛て書面により秋田大学病院における精密検査を受けて治療するよう申出たのに対し、原告らにおいてときわ病院以外の診療を受ける意思のないことを理由に右申出を拒否していること、

以上のとおりであり、右の認定を左右するに足る証拠はない。

右認定の事実によると、原告らにおいて、その傷害の治療のため、秋田市を離れ遠隔地にあるときわ病院に入院し、同病院における治療を受けるまでの必要があつたものかどうか疑わしく、同病院における入院治療費については、入院関係費用を除く、治療費の限度で相当な費用として是認されるべきである。

3  被告は原告力の人的損害について、前記訴外谷村錦水の追突事故(以下「前事故」という)との競合を主張するので検討するに、成立の真正に争いのない甲第二号証の五、六証人佐藤善政の証言によれば、前事故直後、右上肢の疼痛としびれ、背部痛、頭重感、吐気を訴え、本件事故直前の昭和四九年一〇月四日の症状としてなお右手指のしびれ、背部痛、後頭部痛があつたが症状は初診時より軽快していたこと、本件事故後、従来の症状に加え新たに腰痛を生じ昭和五〇年六月一〇日ころにも腰痛のため長くすわつて居れないと訴え、ときわ病院における初診時所見としては頭痛、項背痛、右上肢、左下肢痛、腰痛を、入院中にめまい、耳痛、両眼充血、眼痛、右尺骨神経域(薬指、小指)にしびれ感を訴えていたことが認められ、右認定の病状の推移に、本件事故前昭和四九年七月以降はタクシー運転手として働ける程度に回復していたこと、本件事故の際追突の衝撃により約二二・五メートル前方に突き出されていること、同乗者の原告ムネについても原告力と同程度の治療期間を必要としていることを併わせ考えると、本件事故による原告力の損害額を算定するについて前事故による傷害を斟酌して減額を施すまでの必要はないとみるべきである。

三  そこで以下右認定の治療の内容、経緯を前提として原告らの損害額について検討する。

1  原告力の損害

(一)  治療費

成立の真正に争いのない第三号証の一、二、三、四によれば、秋田組合総合病院の治療費は二一〇〇円、中通病院の治療費は一一万七九八〇円、ときわ病院における昭和五〇年二月二一日より同年五月三一日までの間の入院料を除く治療費は二四万四三九〇円であることが認められるから右治療費の合計は三六万四四七〇円となるところ、原告力の治療費として労災保険より総額四六五万四三〇一円の補償が行われたことは当事者間に争いがないから右治療費については全額填補されたこととなる。

(二)  通院交通費 金一万〇八〇〇円

成立の真正に争いのない甲第四号証によれば中通病院通院交通費として一万〇八〇〇円を支出したことが認められる。

(三)  休業損害 金八四万二七二九円

成立の真正に争いのない甲第五号証、第六号証の六によれば、原告力は本件事故当時合資会社八郎潟タクシーに運転手として勤務し、本件事故直前の昭和四九年七月、八月、九月の三か月間稼働し、二七万七九三五円、月額平均九万二六四五円の収入を得ていたことが認められるところ、前記認定の原告力の職業、傷害の部位程度、治療経過に照らし本件事故と因果関係のある休業期間は昭和五一年一二月までの二七か月間と認めるのを相当とするから休業損害の総額は二五〇万一四一五円となるところ、右休業損害に対しては労災保険より一六五万八六八六円の補償がなされていることは当事者間に争いがないからその残額は八四万二七二九円となる。

(四)  慰謝料 金一〇〇万円

原告鷲谷力本人尋問の結果によれば、原告力は昭和五二年四月三〇日ときわ病院を退院し、同年七月一九日以降タクシー運転手として勤務していることが認められることに前記傷害の程度、その他諸般の事情を考慮し、その精神的損害に対する慰謝料を一〇〇万円と認める。

(五)  車両の損害

原告力主張の被害車両の破損による損害額一四万四二七八円についてはこれを認め得る証拠はない。

2  原告ムネの損害

(一)  治療費

成立の真正に争いのない甲第七号証の一ないし三、甲第七号証の四、五によれば湖東総合病院の治療費は一万八六六〇円、中通病院の治療費は一〇万二〇〇〇円、秋田大学附属病院の治療費は四一九〇円、ときわ病院における昭和五〇年二月二一日から同年五月三一日までの間の入院料を除く治療費(甲第七号証の一ないし五)は合計四三万一九五〇円であることが認められるから、右治療費の合計は五五万六八〇〇円となるところ、原告ムネの治療費については労災保険より四五六万四九八三円の補償が行われたことは当事者間に争いがないから右治療費については全額填補されたこととなる。

(二)  交通費 一万一一二〇円

原告鷲谷ムネ本人尋問の結果により成立の真正を認める甲第九号証によれば、湖東総合病院の通院交通費として一四〇円、中通病院、秋田大学附属病院の通院交通費として一万〇九八〇円合計一万一一二〇円の支出したことが認められる。

(三)  ポリネツクカラー代 四〇〇〇円

成立の真正に争いのない甲第八号証によればポリネツクカラー代金として四〇〇〇円を支払つたことが認められる。

(四)  診断書交付料 二三〇〇円

成立の真正に争いのない甲第七号証の一、三、四、五によれば診断書料として三二〇〇円を支払つていることが認められるから内金二三〇〇円の請求は肯認される。

(五)  休業損害 四四万〇八九八円

その内容と形式により成立の真正を認め得る甲第一〇号証、原告鷲谷ムネ本人尋問の結果によれば原告ムネは本件事故当時キクチ縫製に勤務し、昭和四九年七月、八月、九月の三か月間に合計一〇万一一三四円月額平均三万三七一一円の収入を得ていたことが認められるところ、同原告の傷害の部位、程度、治療経過に照らし、本件事故と因果関係のある休業期間は昭和五一年一二月までの二七か月間と認めるのを相当とするから休業損害の総額は九一万〇一九七円となるところ、右休業損害に対しては労災保険より四六万九二九九円の補償を得ていることは当事者間に争いがないからその残額は四四万〇八九八円となる。

(六)  慰謝料 一〇〇万円

原告の傷害の部位、程度、治療期間その他諸般の事情を斟酌しその慰謝料を一〇〇万円と認める。

四  被告は原告らの損害額につき過失相殺を主張するのであるが、成立の真正に争いのない乙第五一号証によれば、本件事故は被告の脇見運転の一方的過失に基因するものであることは明らかであるから、被告の過失相殺の抗弁は失当である。

五  以上のとおり、原告力の損害額の合計は一八五万三五二九円、原告ムネの損害額の合計は一四五万八三一八円となるところ、被告より原告力に対し九九万八三〇七円、原告ムネに対し八九万六三二五円が支払われていることは当事者間に争いがないから、原告力の損害は八五万五二二二円、原告ムネの損害は五六万一九九三円となる。

六  原告らは本件訴訟の提起及び追行を原告ら訴訟代理人に委任していることは明らかであり、弁護士費用は原告力につき九万円、原告ムネにつき六万円と認める。

七  よつて原告らの本訴請求は、被告に対し原告力において九四万五二二二円、原告ムネにおいて六二万一九九三円及び右の各金員に対し昭和五二年七月二〇日以降支払ずみまで年五分の割合による金員の支払を求める限度でその理由があるので正当として認容し、その余を失当として棄却し、訴訟費用につき民訴法八九条、九二条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 名越昭彦)

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